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AVプロダクション

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戦後日本に固有の業態として発達したAV産業は、出演者の確保と業務管理を専門とする独自の芸能事務所類型を生み出した。

AVプロダクション(えーぶいぷろだくしょん、英: AV production agency)とは、AV女優を中心とする出演者のマネージメント業務を行う芸能事務所の一類型である。一般に「AV プロ」「AV 事務所」「AV エージェント」とも呼ばれる。出演者のスカウト、所属契約の締結、メーカーとの作品出演交渉、撮影現場への帯同、宣伝活動の調整等を業務範囲とし、AV 産業における制作メーカーと出演者の中間に立つ機能的存在として位置づけられる。本項では 1980 年代における業態の確立、主要プロダクションの系譜、業務範囲、ならびに 2022 年のAV 新法施行以降の業務変容について扱う。

概要

AVプロダクションは、戦後日本のAV産業に固有の業態として発達した芸能マネージメント事業の一類型である。一般芸能事務所と同様に出演者の業務管理を主たる業務とするが、その対象が成人向け映像作品の出演者であり、業界特有の契約構造・宣伝慣行・倫理規範に対応した業務形態を備える点で独立した類型を構成する。

業界用語としては「プロ」「プロダクション」「事務所」「エージェント」等と呼称され、媒体・文脈によって用語の使い分けがなされる。一部の大手プロダクションは芸能・グラビア分野のマネージメントを並行して行い、AV 部門を独立した事業ユニットとして運営する場合もある。

業界構造的には、(1) 出演者(女優・男優)、(2) AVプロダクション、(3) 制作メーカー(レーベル)、の三者間契約による業務遂行が標準形態であり、プロダクションは出演者と所属契約を、メーカーとは個別の作品出演契約を締結する仲介的位置を占める。

語源と呼称

「プロダクション」(production)は、本来「制作」「制作会社」を意味する英語語に由来し、日本の芸能業界では「芸能プロダクション」(芸能事務所)の略称として 1960 年代以降に定着した用語である。AV 業界においても同用法が継承され、出演者所属事務所を指す呼称として 1980 年代以降に一般化した。

「AVプロダクション」という業界呼称は、(1) 制作機能を持つ「メーカー」(maker、レーベル運営会社)とは概念的に区別され、(2) 出演者のマネージメント機能を主たる業務とする芸能事務所を指すものとして用いられる。ただし業界外文献では両者の混用も見られ、文脈による語義の確認が必要となる場合がある。

歴史

1980 年代における業態確立

AV プロダクションの業態確立は、日本の AV 産業が成立した 1980 年代前半とほぼ並行する。1981 年(昭和 56 年)前後の家庭用ビデオデッキの普及拡大期において、ビデオ専用作品の制作が本格化するに伴い、出演者の調達・管理を専門とする芸能事務所機能の必要性が業界内で認識されるに至った。

業態確立の初期段階では、(1) 既存のグラビア・モデル事務所が AV 出演者を取り扱う派生業務、(2) ピンク映画ロマンポルノの俳優事務所からの転換、(3) スカウト業務を主軸とする新興事務所の設立、の三系統が並行的に存在した。1980 年代半ば、ビデオ業界の独自市場としての確立に伴い、AV 専門のプロダクションが業界内で独立した位置を占めるようになった。

1980 年代後半の主要プロダクションとしては、村西とおるが代表を務めたダイヤモンド映像など、メーカー業務とプロダクション業務を兼営する形態も存在した。同時期、メーカー兼営型と、純粋にマネージメントを専業とする独立型のプロダクションが業界内で並存する構造が形成された。

1990 年代の業界拡大

1990 年代に入り、AV 産業が飛躍的拡大期を迎えるに伴い、プロダクションの業務規模・業界的影響力も大きく拡大した。専属女優制度の業界的普及により、メーカーとの長期専属契約の交渉・管理がプロダクション業務の中核として位置づけられるに至った。

同時期に登場・成長した主要プロダクションには、プライム・エージェンシー、トゥエンティーン(20s)、H.M.P(エイチ・エム・ピー)など、業界内で広範な影響力を持つ事務所群が含まれる要出典。これらの事務所は、(1) 専属女優の継続的確保、(2) 新人スカウト網の拡張、(3) メディア露出戦略の体系化、を通じて、業界における職業マネージメント機能の標準化に寄与した。

1990 年代後半以降、複数プロダクションを束ねる業界団体的な機能も部分的に発達し、業界内の自主規制・倫理規範の調整、メーカーとの取引条件の慣行化等が進行した。

2000 年代以降の多様化

2000 年代に入り、業界の流通形態が VHS から DVD、さらに配信プラットフォームへと移行するに伴い、プロダクション業務の形態も多様化した。インターネットを介した出演者の個人ブランディング、SNS を通じたファン・コミュニケーション、海外市場への展開等が、プロダクションの業務範囲に追加された。

同時期、専属女優制度の比重が相対的に低下し、企画女優・フリー女優を中心とする出演者群の比率が増加した。これに伴い、プロダクションの業務形態も、長期専属契約の管理から、複数メーカーへの作品単位の出演調整へと比重を移す傾向を示した。

2010 年代以降は、SNS・ライブ配信プラットフォームの台頭により、プロダクションが出演者の個人ブランド構築・配信運営をも支援する複合的マネージメント機能を持つ事例が増加している。

業務範囲

スカウト

新人出演者の発掘(スカウト)は、プロダクションの中核業務の一つである。専門のスカウトを擁する事務所、外部のスカウト業者と連携する事務所、応募・紹介ベースで新規所属者を確保する事務所など、業務形態は複数存在する。新人スカウトは業界の継続性を支える基盤的業務として位置づけられており、その業務慣行は業界倫理の観点から継続的な議論の対象となってきた要出典

なお、出演候補者への接触・契約勧誘の方法については、後述するAV 新法による規制の対象となっており、不当な勧誘・契約締結の禁止が法的に明文化されている。

所属契約と業務管理

出演者との所属契約は、(1) 契約期間、(2) 業務範囲(AV 出演に限定するか、グラビア・配信等を含むか)、(3) 報酬分配、(4) 競業避止条項、等を内容として締結される。所属契約は通常 1 年から 3 年程度の期間で更新され、契約期間内のスケジュール管理・経費精算・福利厚生等をプロダクションが担当する。

メーカーとの出演交渉・撮影手配

プロダクションは、所属女優のメーカー作品への出演について、メーカー側との個別交渉を担当する。専属契約の場合は長期契約を締結し、企画女優の場合は個別作品ごとに出演条件を交渉する。撮影日程の調整、撮影現場への帯同(マネージャー業務)、撮影後の業務確認等もプロダクションの業務範囲に含まれる。

宣伝活動・メディア対応

所属女優のメディア露出の調整、宣伝イベントへの出演手配、SNS 運用支援、ファン・コミュニティとの接点管理等も、プロダクション業務の重要な構成要素である。1990 年代以降の業界拡大期には、プロダクションがメーカーと連携して女優のメディア露出戦略を体系的に展開する慣行が定着した。

契約終了後のサポート

業界引退後の出演者支援は、プロダクションの倫理的責務として議論される業務領域である。一部の大手プロダクションは、引退後の業界外活動・職業転換・心理的支援等のフォロー体制を整備しているが、業界全体での標準化は十分に進んでいないとされる要出典

AV 新法による契約透明化

2022 年(令和 4 年)6 月 23 日施行の「AV 出演被害防止・救済法」(通称AV 新法)は、AV プロダクションの業務に対しても大きな構造変化をもたらした。同法は、(1) 出演契約の書面交付義務、(2) 契約締結から撮影開始までの待機期間(1 か月)、(3) 撮影終了から作品公表までの待機期間(4 か月)、(4) 一定期間内の無条件契約解除権、(5) 不当な勧誘・契約・撮影行為の禁止、を規定し、業界の契約慣行に対する制度的枠組みを整備した。

プロダクション業務の側からは、(a) スカウト時点での書面説明の徹底、(b) 撮影前後の待機期間に対応するスケジュール管理の長期化、(c) 契約解除権行使時のメーカー間調整、等の業務変容が生じている。同法施行直後の 2022 年後半から 2023 年にかけては、業界全体で新作制作本数が減少した時期があり、これはプロダクションの新規契約手続きの慣行整備期間に対応するものと解される要出典

業界倫理の観点からは、AV 新法はプロダクション業務における契約透明化・出演者意思確認の制度的標準化として評価される側面を持つ。同時に、業務効率・経済合理性の観点からは、待機期間の長さ・契約解除権の運用方法等について業界内で継続的な議論が行われている。

業界倫理と論点

AV プロダクションの業務倫理は、業界内外で継続的な論点となってきた領域である。論点の中心には、(1) スカウト業務における勧誘行為の適正性、(2) 所属契約の解除困難性、(3) 出演者の業界引退後のプライバシー管理、(4) 報酬分配の透明性、等が含まれる。

社会学者・中村淳彦『AV 女優の社会学』(2014)、『性風俗産業の社会学』(2017)などの研究は、プロダクションを含む業界構造の労働社会学的分析を提示し、業界倫理の制度的課題を論じている。ジャーナリスト・本橋信宏『AV 30 年史』(2011)は、業界史の文脈においてプロダクションの役割と倫理的課題を記述している。安田理央『日本エロ本全史』(2019)等の業界史的記述も、出版・映像メディアを横断する性産業の中での AV プロダクションの位置を論じている。

近年は、業界団体による自主倫理規定の整備、プロダクション間の情報共有の制度化、被害者支援団体(NPO 法人 PAPS 等)との対話体制の整備等が進行している。これらは、AV 新法の施行と並行して、業界倫理の制度的水準を向上させる取り組みとして位置づけられる。

国際比較

世界の主要諸国における成人向け映像産業のマネージメント構造は、各国の業界制度に応じて異なる形態を取る。米国アダルト業界では、出演者の多くが独立業務委託(independent contractor)として複数メーカーと直接契約を結ぶ形態が標準的であり、エージェント機能はあるものの日本のプロダクションのような長期所属契約は一般化していない。欧州諸国では、国別の労働法制・業界自主規制に応じて多様な業務形態が並存する。

日本の AV プロダクション制度は、専属女優制度・三者間契約構造・芸能マネージメント業界との連続性等の特徴を備え、世界の成人向け映像産業の中でも独自の業態として位置づけられる。同制度の比較研究は、性産業の労働構造・労働法制の国際比較研究の一領域を成している。

文化的言及

AV プロダクションを主題的に取り上げた文化作品として、Netflix シリーズ『全裸監督』(2019)が挙げられる。同作品は、ジャーナリスト・本橋信宏『全裸監督―村西とおる伝』(2016)を原案として、1980 年代の AV 業界黎明期におけるダイヤモンド映像のメーカー兼営型事業の展開を描いている。同作品の社会的反響は、AV プロダクションを含む業界構造を一般社会の文化的視野に再導入する契機となった。

業界内では、プロダクションの代表者・マネージャーの回顧録、業界記者によるルポルタージュ等が継続的に出版されており、業界史の一次資料として参照されている。

関連項目

参考文献

  1. 本橋信宏 『AV 30 年史―日本のアダルトビデオ業界の歩み』 彩流社 (2011)
  2. 本橋信宏 『全裸監督―村西とおる伝』 太田出版 (2016)
  3. 安田理央 『日本エロ本全史』 太田出版 (2019)
  4. 中村淳彦 『性風俗産業の社会学』 勁草書房 (2017)
  5. 中村淳彦 『AV女優の社会学』 中央公論新社 (2014)
  6. 『AV出演被害防止・救済法』 法律 第78号 (2022)
  7. 藤木 TDC 『アダルトビデオ革命史』 幻冬舎 (2009)

別名

  • AV プロ
  • AV 事務所
  • AV エージェント
  • AV production agency
  • アダルトビデオプロダクション
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