スレンダー
グラマーでもなく、ぽっちゃりでもない、もう一つの基幹的体型カテゴリ。
スレンダー(英: slender)とは、細身・痩身の体型を指す日本語の評価語である。英語形容詞 slender(細い、細身の)を直接借用した外来語であり、漢語起源の同義語「細身」(ほそみ)、「痩身」(そうしん)、「華奢」(きゃしゃ)等が並列する。グラマー型・ぽっちゃり型と対比される身体類型で、アダルトビデオ・グラビア・モデル業界における基幹的体型カテゴリを構成する。
概要
スレンダー体型は、身長に対して相対的に体重・体脂肪率が低い体型を指す。具体的な評価項目としては、(1) 細い四肢、(2) くびれたウエスト、(3) 全体としての均整、(4) 軽やかな身体印象等が挙げられる。「スレンダー巨乳」「スレンダー美乳」「スレンダー小柄」等、他属性との修飾結合が日常的に運用される。
グラマー型が乳房・腰回り等のボリュームを強調する体型分類であるのに対し、スレンダーは全体としての細身・軽やかさを強調する分類軸である。両者は対立的というより並走的な評価軸を構成し、現代日本においては両者が並列する多元的体型美意識が支配的である。
アダルトビデオ・同人誌・エロ漫画等のサブカル領域においても、スレンダーは基幹カテゴリとして運用される。「スレンダー系作品」「スレンダー女優」等の商品差別化軸として機能し、巨乳系作品とは別系統の市場を形成している。
語源
「スレンダー」は英語形容詞 slender の音転写による外来語である。英語 slender は中世英語 slendre に遡り、原義は「細い、薄い、わずかな」を意味する。当該語は近代以降の英語において体型評価語として広く運用されており、20 世紀後半の日本における外来語受容の過程で日本語サブカル領域・グラビア・モデル業界に導入された。
日本語における同義の漢語語形は複数あり、「細身」「痩身」「華奢」「すらり」「すらっと」等の表現が並列する。これらの語形は概ね同義域を持つが、「スレンダー」が外来語としての洗練・現代的印象を伴う語形として運用されるのに対し、漢語語形は古典的・伝統的印象を伴う傾向がある。業界用語としての「スレンダー」は、後者の伝統的語形より明確に現代サブカル領域・グラビア・アダルトビデオ領域における体型分類軸として位置づけられる。
英語圏では slim / skinny / slender 等が概ね同義域を持つが、ニュアンスは微妙に異なる。slim が中性的・肯定的、skinny が痩せすぎを示唆する含意、slender が洗練・優美を含意する語形として運用される傾向がある。日本語の「スレンダー」は slender の肯定的含意を継承した借用と位置づけられる。
美意識史
体型美意識の歴史的変動
体型美意識は時代・文化により大きく変動する典型的な文化的構築物である。古代ギリシア・ローマの均整美、中世欧州の慎ましい美意識、ルネサンス期のグラマー美意識、19 世紀後半のコルセット文化におけるくびれ重視美意識、1920 年代の「フラッパー」スタイルにおける細身美意識、1950 年代のハリウッド・グラマー美意識等、20 世紀以前の欧米における美意識の振り幅は大きい。
20 世紀後半は、英国モデル Twiggy(本名レスリー・ホーンビー)が 1966 年にデビューし、極端な細身体型を「現代女性美の理想」として定着させた経緯が記録されている。Twiggy 以降の数十年間、欧米モデル業界・ハイファッション業界は細身体型を主軸とする美意識体系を維持してきた。
日本における体型美意識も、欧米潮流と並走しつつ独自の発達を遂げた。1980 年代後半の巨乳流行語化はグラマー美意識の浸透を象徴する事象であり、同時期にスレンダー美意識も並列的に発達した。
現代日本の多元的体型美意識
21 世紀初頭以降、日本においても身体ポジティブ運動の浸透、SNS による多元的美意識の流通、ぽっちゃり系・スレンダー系等の細分化された商品ラインナップの並走により、体型美意識は単一の「理想型」を持たない多元的構造へと段階的に移行している。
現代日本のサブカル・グラビア・アダルトビデオ業界においては、巨乳系・爆乳系・スレンダー系・ぽっちゃり系・小柄系・筋肉系等、複数の体型カテゴリが商業的に並走する状態が標準となっている。当該並走構造は、単一理想型の支配する従来構造とは質的に異なる、現代特有の体型美意識のあり方として論じられる。
派生・運用
スレンダー系作品
アダルトビデオ・同人誌領域における「スレンダー系作品」は、細身体型を主題化した独立カテゴリを構成する。グラビアアイドル出身女優、モデル業界出身女優、素人系作品等との接続が活発で、巨乳系作品とは異なる商品体系を持つ。
スレンダーと他属性の複合
「スレンダー巨乳」「スレンダー美乳」「スレンダー人妻」「スレンダーOL」「スレンダー小柄」等、他属性との修飾結合が日常的に運用される。複合タグとしてのスレンダーは、商品検索体系における基幹分類軸の一つを構成している。
隣接概念との関係
- 貧乳: 乳房サイズに焦点を当てた体型評価。スレンダーと相関するが独立した評価軸を持つ。
- 小柄: 身長に焦点を当てた体型評価。スレンダーと部分的に重なる場合がある。
- ぽっちゃり: スレンダーの対概念として位置づけられる体型カテゴリ。
- 筋肉: 細身でありつつ筋肉量を伴う派生形。スレンダー系の一派生として位置づけられる場合がある。
文化的言及
身体研究・ジェンダー論の領域では、スレンダー美意識の社会的影響が継続的研究主題となっている。極端な細身美意識への偏重が摂食障害・ボディイメージ問題と相関する点が、医学・心理学的研究で指摘されている。当該議論は、表現の自由・産業の発達・消費者の選択・健康影響等、複雑な利害が交錯する論点として、単純化困難な性質を持つ。
メディア研究の観点からは、スレンダー美意識の構築過程・流布過程・他文化との相互作用が継続的研究主題である。Twiggy 以降の欧米モデル業界、日本のグラビア業界、SNS による国際的美意識の流通等、複数の主体が当該主題に関与している。
ファッション業界においては、スレンダー体型はハイファッション・ランウェイモデルの標準形として位置づけられてきた。一方、近年の身体ポジティブ運動の浸透に伴い、複数体型を起用するブランド・媒体が増加しており、当該基準の見直しが業界横断的に進行している。
関連項目
参考文献
- 『Body Image』 Guilford Press (2002)
- 『美人論』 リブロポート (1991)
- 『現代体型史』 光文社 (2012)
- 『Survival of the Prettiest』 Anchor Books (1999)