布一枚を腰に巻きつけて結ぶ。古代から続くその簡素な装束が、現代では和装フェチの一翼を担う独立した記号となった。
ふんどし(褌、英: loincloth)とは、長い帯状の布を腰回りに巻き付けて装着する日本の伝統的下着である。男性用下着として古代から近代に至るまでの長い歴史を持ち、20 世紀後半以降は洋式下着への置換が進んだ結果、現代では祭事・伝統衣装・健康・フェチ等の文脈で部分的に存続する装束となった。成人向け表現分野では、和装系・伝統系のコスプレ装束として独自の地位を保持している。
概要
ふんどしの典型的形態は、長い帯状の布(白木綿が標準)を腰部に巻きつけ、股を通して所定の結び方で固定する装束である。代表的形式として、越中褌(えっちゅうふんどし)・六尺褌(ろくしゃくふんどし)・畚褌(もっこふんどし)等の複数形式が並存する。素材は白木綿が標準であるが、紅白・色物・刺繍入り等の祭事用変奏も存在する。
成人向け表現分野では、ふんどしは和装フェチ(着衣系の和装枝)の一翼を担う装束として組み込まれてきた。男性キャラクターの伝統的下着・祭事衣装としての文脈に加え、現代では女性キャラクターの意匠的変奏(女ふんどし)がコスプレ・着エロ・同人誌圏で流通する形で、独自のジャンル領域を形成している。
本記事は、成人男女の伝統下着・祭事衣装・和装フェチ装束としての文脈における当該記号を扱う。
語源
「ふんどし」の語源には複数説があり、確定的な定説は存在しない。「踏み通し」の音便変化説、「振り通し」の変化説、「臀貫(ふんぬき)」の変化説等が挙げられる。要出典
漢字「褌」は、衣偏に「軍」を組み合わせた漢字で、中国古代から下着の意で用いられた漢語である。日本語では「ふんどし」「こん」等の訓読み・音読みで読まれる。
「越中褌」は江戸時代の医師・細川越中守(または同名の他者)が考案ないし普及させたとされる前掛け式の形式で、当該人名に由来する命名と伝えられる。「六尺褌」は布の長さ(おおむね六尺=約 1.8 メートル)に由来する命名である。
歴史
古代から中世
ふんどしの原型は、古代から日本に存在した。律令期以前の埴輪・装身具等の遺物から、男子の腰部に布を巻く装束の存在が示唆される。要出典 平安期以降の文献では、貴族・庶民を問わず男性の下着として褌が記述されており、装束体系の中で明確な位置を占めていた。
中世以降、武士・農民・職人等の各身分で、生活衣・労働衣・祭事衣の下着として褌が広く用いられた。素材は麻が古代の標準であり、後に木綿の普及に伴って木綿製が主流となった。
江戸時代の定型化
江戸時代には、複数の褌形式が並存し、地域・身分・職業によって使い分けられる定型化が進んだ。越中褌は江戸中期以降に普及し、結びやすく肌当たりの良い形式として一般庶民に広まった。六尺褌は祭事・力士・労働の場面で用いられる、より長い布を巧みに結ぶ形式として確立する。
江戸期の春画・浮世絵には、男性が褌姿で描かれる場面が頻繁に登場する。当該作例は、褌が江戸期の男性身体表象において日常的・標準的な装束であった史実を傍証する資料として機能する。
近代から現代の衰退
明治期以降の洋装化を経て、20 世紀前半まで褌は男性下着の標準として用いられ続けた。第二次大戦期には日本軍兵士の標準下着として越中褌が支給され、戦後復員者世代に至るまで褌は世代記憶として共有される装束であった。
戦後の生活様式の急速な洋風化を経て、1960 年代以降に洋式下着(トランクス・ブリーフ等)への置換が進み、褌は急速に日常下着としての地位を失う。1970 年代以降は、祭事衣装(神輿担ぎ・神事・各地の伝統行事)、相撲取り(まわしの内側に着用する廻し下)、健康下着の愛好家等の限定的文脈でのみ用いられる装束となった。
現代の存続文脈
現代では、ふんどしは複数の文脈で部分的に存続する。第一に、各地の祭事・伝統行事(神輿担ぎ、寒中水浴、伝統儀礼)の装束として、褌姿は現役の様式として継承される。第二に、相撲・伝統武道等の競技衣として組み込まれ続ける。第三に、健康・冷え性対策・伝統文化愛好の文脈で、褌を日常下着として復活させる動きが 2010 年代以降に「ふんどしブーム」として小規模に流通している。要出典
第四に、成人向け表現分野・コスプレ文化での装束記号としての存続がある。和装系・伝統系・祭事系のロールプレイ・コスプレ・着エロビデオ・同人作品の中で、男女問わず褌姿が組み込まれる事例が継続的に観察される。
サブカル類型
成人向け表現分野でふんどしが組み込まれる類型として、以下の構図が定型化している。
祭事系の場面構成では、神輿担ぎ・夏祭り・伝統行事の場面で、男女キャラクターが褌・浴衣等の和装下着を着用する場面が用いられる。汗・水・夜の祭りの熱気等の演出と組み合わさる。
時代物・歴史物の場面構成では、武士・農民・力士等の歴史的キャラクターの装束として褌が組み込まれる。江戸期・明治期の生活風景を背景とする物語装置としての機能を持つ。
女ふんどし(女性キャラクターが装飾的な変奏を施した褌型衣装を着用する設定)は、近年の成人向け表現分野で発展した派生記号である。伝統的形式から逸脱した装飾系・露出系の意匠が、コスプレ衣装メーカー・同人誌圏で流通する。
派生形態
ふんどしの主な形式・変奏は以下の通り。
- 越中褌:前掛け式。平日の常用形式
- 六尺褌:長い布を結ぶ形式。祭事・労働・力士で用いる
- 畚褌(もっこふんどし):紐付きの簡易形式
- まわし:相撲取りの稽古衣・本場所衣装
- 女ふんどし:近代以降の女性用意匠的変奏
- 装飾褌:祭事・コスプレ用の刺繍・色物等の意匠的変奏
- ロリータ系褌:同人圏のフィクション的意匠
関連表象
ふんどしが組み込まれる物語装置として、夏祭り・温泉宿・神事・歴史物の四典型がある。夏祭りでは浴衣との組み合わせ、温泉宿では和装の入浴文化との組み合わせ、神事では巫女・神官等の伝統職能との組み合わせ、歴史物では時代背景としての組み込みが定型化している。
服装文脈では、浴衣・着物・巫女等の和装系記号と隣接する位置にある。装束系成人向けジャンルの中で、洋装系記号(制服・スクール水着・ニーソックス等)と対照的な「和装・伝統・祭事」の独自の記号束を形成する。
関連項目
参考文献
- 『下着の文化史』 光文社 (2008)
- 『日本服飾史』 東京堂出版 (2013)
- 『ふんどしの文化史』 青弓社 (2003)
- 『和装の民俗学』 未来社 (1995)
別名
- 褌
- フンドシ
- ふんどし
- loincloth
- 越中褌
- 六尺褌