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成人向け雑誌

seijinzasshi
分類エロ作品 用例「中学生のころにエロ本を友人と回し読みした」 「コンビニから成人向け雑誌が消えた」 用法名詞・動詞 最終更新 ▸ 累計 PV

書店の棚に置かれた厚紙のスリーブ、コンビニの上段に並んだ青いシール付きの背表紙、深夜の本屋でレジに差し出された一冊。雑誌という形式は、戦後日本において性的表象を最も大量かつ恒常的に流通させてきた媒体である。

成人向け雑誌(せいじんざっし、俗称・エロ本)とは、性的主題を中心的編集方針とする一般市場流通の月刊・週刊誌の総称である。本項では戦後日本におけるカストリ雑誌から平凡パンチ、ビニ本、投稿写真誌、コンビニ撤退に至る雑誌史と、エロマンガ誌・グラビア誌・実話誌等の主要ジャンル、ならびに法的・流通的境界の変遷を扱う。

概要

成人向け雑誌の範囲は法的には明確に定義されていない。1948 年制定の刑法 175 条(わいせつ図画頒布罪)、各都道府県の青少年保護育成条例による有害図書指定、出版倫理協議会等の業界自主規制、コンビニエンスストアの自主撤去基準といった複層的な規制のなかで、出版社が「18 歳未満禁止」「成人指定」のマークを付して区分流通する一群を指す。

雑誌の物理形態と流通網は、性的表象の社会的位置を決定する根本要素となってきた。書店の棚に置けるか、駅の売店で売れるか、コンビニで扱えるか、そしてビニールで密封して中身を見せないか。これらの問いに対する答えの変遷が、戦後の成人向け雑誌史の骨格を成している。

戦後雑誌史

カストリ雑誌期(1946–1949)

敗戦直後の出版自由化と用紙不足のなかで、低品質のカストリ雑誌が爆発的に勃興した。『猟奇』『りべらる』『奇譚クラブ』前身誌等、性風俗・猟奇・実話を売り物にした雑誌が数百誌単位で創刊・廃刊を繰り返した。占領下 GHQ の検閲方針が比較的緩く、戦前の発禁制度から解放された出版人たちが、性的記述を生計の糧として大量生産した時期である。

カストリ雑誌は印刷の質、紙の質、編集の質のいずれも低く、「三号で潰れる」雑誌の代名詞となった。それでも『りべらる』『真相』等の一部誌は数十万部規模に到達し、戦後出版の最初期における大衆媒体として機能した。詳細はカストリ雑誌の項を参照。

男性週刊誌期(1964–1970 年代)

1964 年 4 月 28 日創刊の『平凡パンチ』(マガジンハウス)は、戦後成人向け雑誌史の決定的な転回点となった。アメリカのライフスタイル誌『PLAYBOY』(1953 年創刊)の影響下、ファッション・自動車・音楽・ヌードグラビアを統合した若年男性向け週刊誌の形式を日本市場に導入した。創刊号は 60 万部を売り、ピーク時には 100 万部を超えた。

1966 年に集英社が『週刊プレイボーイ』を創刊、米国版 Playboy のライセンス誌『月刊プレイボーイ』(集英社、1975 年創刊)、独立系の『PENTHOUSE』日本版(1979 年創刊)等が続いた。これらは「総合男性誌」を標榜し、ヌードグラビアを核としつつ社会問題・スポーツ・芸能記事を併載する編集方針を取った。グラビア表現は徐々に過激化したが、刑法 175 条のわいせつ規制を回避するため、性器陰影の修整(墨入れ・モザイク・ぼかし)が編集側の自主規制として確立した。

1974 年創刊の『GORO』(小学館)は、写真家・篠山紀信による「激写」グラビアコーナーで知られた A4 大判誌である。無名モデルからアイドル歌手・新進女優までを等価に扱ったヌード・セミヌード掲載で、後のグラビアアイドル文化の母胎となった。

ビニ本・自販機本期(1977–1985)

1970 年代末から 1980 年代前半にかけて、流通経路の異なる二つの形態が爆発的に普及した。一つは「ビニ本」(ビニール本)で、書店の店頭で透明ビニールに密封して販売する形態である。中身が見えない密封により、店頭で内容確認できない代わりに、書店側は「中身を知らなかった」と主張できる流通の建前が成立した。これにより従来の青年誌より過激なヌード表現が可能になった。

二つ目は自販機本である。深夜の郊外路上に設置された自動販売機を経由する流通で、店頭・対面販売を経ないため、当時の青少年保護育成条例の網が及びにくかった。1980 年前後にピークを迎え、全国に数万台規模で設置されたが、各地の青少年条例強化と警察行政の取締りにより 1985 年頃から急減した。

1980 年代前半にはまた、読者投稿写真を売りとする「投稿写真誌」も独自のジャンルとして確立した。『投稿写真』(1982 年創刊)、『写真時代』(1981 年創刊、編集長・末井昭)等が代表で、素人カップルからの投稿写真と編集者による文章・サブカル評論を組み合わせた誌面構成を取った。

コンビニ・専門誌分化期(1985–2000)

1985 年の風営法改正と各都道府県の青少年保護育成条例強化により、自販機本・路上売りの流通は事実上消滅した。代わって 1980 年代後半から 1990 年代にかけて、コンビニエンスストア流通の青年誌・実話誌・ギャル誌が成人向け表現の主戦場となった。『週刊プレイボーイ』『FLASH』『FRIDAY』等の中綴じ写真週刊誌、『投稿写真』系列、『裏ビデオ最新情報』『熟女倶楽部』等の専門誌が、コンビニの上段棚で常時数百タイトル規模で流通した。

エロマンガ専門誌もこの時期に独自ジャンルとして確立した。『漫画ホットミルク』(1986 年創刊、白夜書房)、『ペンギンクラブ』(1986 年創刊、辰巳出版)、『漫画 BURGER SS』『COMIC LO』等が連続的に創刊され、青年マンガ誌のエロパロディから独立した「成人向けマンガ専門誌」のフォーマットが定着した。詳細はエロマンガの項を参照。

コンビニ撤退期(2017–2019)

2010 年代後半、女性客・観光客への配慮、コーポレートガバナンス、東京オリンピック(2020)に向けた国際的視認性等の要因から、大手コンビニチェーンが相次いで成人向け雑誌の取り扱い終了を発表した。2018 年 8 月にミニストップが先行撤退、2019 年 8 月にセブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートの大手三社が同月内に撤退を発表した。

この撤退により、成人向け雑誌の物理流通は大きく縮小し、書店・専門店での販売、ならびにデジタル配信(電子書籍、サブスクリプション)への移行が決定的となった。出版指標年報のデータでは、2019 年以降の成人向け雑誌の販売部数は前年比で大幅な減少を示している。

主要ジャンルの分類

戦後の成人向け雑誌は、編集方針・読者層により以下のジャンルに分化した。

総合男性誌は、ヌードグラビアを核としつつ、社会・芸能・スポーツ記事を併載する形態。『平凡パンチ』『週刊プレイボーイ』『POPEYE』等が代表で、若年男性のライフスタイル誌として機能した。

実話誌は、犯罪事件・性犯罪・芸能ゴシップを売りとする雑誌で、グラビアは補助的位置づけとなる。『週刊実話』『実話ナックルズ』等が代表である。

投稿写真誌は、素人カップルからの投稿写真を中核とする形態で、『投稿写真』『写真時代』等が代表である。1980 年代に独自のサブカルチャーとして確立した。

エロマンガ専門誌は、性的主題のマンガを連載・読み切り形式で掲載する月刊誌で、独立した編集ジャンルを成す。詳細はエロマンガの項を参照。

ギャル誌・人妻誌・熟女誌等は、特定の女性カテゴリーに特化した専門誌である。1990 年代以降、読者の嗜好細分化に応じて細かいセグメントが展開された。

法制度との関係

成人向け雑誌は、刑法 175 条(わいせつ図画頒布罪)、各都道府県青少年保護育成条例(有害図書指定)、出版倫理協議会の自主基準、書店・コンビニの自主撤去基準という多層的な規制のもとで運営される。法的規制は「直接的性器描写の不掲載」を中核とし、編集側はモザイク・墨入れ・トリミング等の修整技術により規制境界を運用してきた。

1990 年代後半以降のインターネット普及により、雑誌の独占的位置は徐々に侵食され、2010 年代以降のコンビニ撤退とデジタル移行により、雑誌媒体の市場規模は急速に縮小している。

文化的言及

成人向け雑誌は、戦後日本の大衆文化・ジャーナリズム史の重要な構成要素として扱われてきた。安田理央『日本エロ本全史』(太田出版、2019)は、1946 年から 2018 年までの主要 100 誌を時代別に解説した網羅的な業界史であり、この分野の標準的参照文献となっている。本田靖春『戦後欲望史』(講談社文庫、2005)は、戦後男性誌の編集者・社会の側からの一次証言を含む。

物理書店・コンビニから消えつつある成人向け雑誌は、戦後日本の大衆メディアの一形態として、文化史・出版史の対象となっている。

関連項目

参考文献

  1. 安田理央 『日本エロ本全史』 太田出版 (2019)
  2. 『ポルノ雑誌』 Wikipedia 日本語版 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%83%8E%E9%9B%91%E8%AA%8C
  3. 『平凡パンチ』 Wikipedia 日本語版 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E5%87%A1%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%81
  4. 本田靖春 『戦後欲望史』 講談社文庫 (2005)
  5. 『出版指標年報』 全国出版協会出版科学研究所 (1980-2020)

別名

  • エロ本
  • 成人雑誌
  • アダルト雑誌
  • 18禁雑誌
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