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漫画規制論争

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分類法律・社会 用例漫画規制論争の経緯を整理する」 「非実在青少年規制をめぐる漫画規制論争 用法名詞・動詞 最終更新 ▸ 累計 PV

漫画規制論争とは、漫画における性的・暴力的描写の規制を巡って、行政・出版業界・作家・市民団体・学識者の間で繰り返されてきた一連の社会論争の総称である。

漫画規制論争(まんがきせいろんそう)とは、漫画というメディアに含まれる性的描写・暴力描写・反社会的描写を巡り、行政機関による不健全図書指定・条例改正・立法の試みと、これに対する出版業界・作家・読者・学識者からの反発との間で展開された一連の社会論争を指す総称である。狭義には 1990 年代初頭の「有害コミック論争」と 2010 年の東京都青少年健全育成条例改正を巡る「非実在青少年論争」を中核とし、広義にはコンビニエンスストアにおける成人向け雑誌の取り扱い・児童ポルノ法改正における漫画規制論・国際的な児童保護条約に伴う規制圧力までを含む。本項では、論争の構造、歴史的経緯、主要論者の論点、産業側の自主規制対応、国際比較、対抗概念について扱う。

論争の構造

漫画規制論争は、形式的には表現の自由と子どもの保護という二つの法益の調整問題として構成されるが、実態としては複数の対立軸が重層的に交錯する複合的争点である。

中心的な対立軸

第一に、規制根拠の正当化を巡る対立軸がある。規制推進側は、(1) 子ども・青少年の健全育成、(2) 性犯罪・性暴力の誘発防止、(3) 性的人格権・性的自己決定権の保護、(4) 公共空間における品位保持、を根拠として提示する。これに対し規制反対側は、(1) 表現の自由・知る権利の優越、(2) 規制効果の実証的根拠の欠如、(3) 規制範囲の不明確性、(4) 萎縮効果(chilling effect)、を反論として提示する。

第二に、規制対象の射程を巡る対立軸がある。実在児童被害の防止を主眼とする立場と、創作物それ自体の規制を是とする立場との間には、被害論理の連続性・断絶を巡る争点が存在する要出典

第三に、規制手段の選択を巡る対立軸がある。刑事規制(刑罰)・行政規制(指定)・ゾーニング(年齢別区分)・自主規制(業界倫理)の四つの手段について、各々の比例原則上の妥当性が争点となる。

関係主体

漫画規制論争には、複数の主体が関与する。行政側では、東京都・大阪府などの自治体、警察庁、内閣府、法務省などが関与する。立法側では、各党国会議員・地方議会議員が関与する。出版業界側では、出版倫理協議会、日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本漫画家協会、コミック市場準備会(コミックマーケット準備会)などが関与する。市民側では、PTA・親の会・宗教団体・人権団体・読者団体・批評家・法学者・社会学者が関与する。

これら主体の利害・価値観は必ずしも単線的ではなく、規制推進・反対の双方に内部対立を抱えている。

戦後の前史

漫画に対する規制圧力は戦後を通じて断続的に存在した。1955 年(昭和 30 年)の「悪書追放運動」は、母の会・PTA・教育団体を中心に展開された大衆運動であり、貸本漫画・少年雑誌を主要対象として、焼却・販売自粛を求めた。同運動は当時の子ども漫画界に強い萎縮効果を及ぼし、出版業界による自主的な内容調整の契機ともなった。

1964 年(昭和 39 年)、東京都は「青少年の健全な育成に関する条例」(以下、青少年健全育成条例)を制定した。同条例は不健全図書類の指定制度を設け、指定図書の青少年への販売・貸与を禁ずる行政規制の枠組みを確立した。これは漫画への直接的規制ではないものの、後の有害コミック論争・非実在青少年論争の制度的土台を成すこととなった。

1970–1980 年代を通じて、漫画は子ども向けジャンルから青年向け・成人向けジャンルへと拡張し、性的描写を含む作品も増加した。劇画誌・青年誌・成人向け漫画雑誌の発行が活発化し、表現の幅が広がった一方、成人向け作品が一般流通網に置かれることへの批判も顕在化していった。

有害コミック論争(1990–1992)

「有害コミック論争」は、1990 年代初頭に展開された漫画規制を巡る大規模な社会論争であり、現代日本における漫画規制論争の起点として位置づけられる。

経緯

1990 年(平成 2 年)、和歌山県のある PTA 関係者が、地元書店に並ぶ成人向け漫画を「有害」と問題視したことが発端の一つとされる。これを受けて自民党を中心に「青少年に有害な環境への対応を考える会」などの議員連盟が組織され、警察庁・総務庁(現内閣府)が中心となって、各都道府県に有害図書類の指定強化を要請する動きが広がった。

1991 年(平成 3 年)には、各都道府県の青少年健全育成条例改正が連鎖的に進み、不健全図書類の指定要件の明確化・指定対象の拡張が行われた。同年、東京都は包括指定方式(性的描写・暴力描写の量・程度に基づく機械的指定)を導入した。

これに対し、出版業界・作家・読者からは強い反発が表明された。1991 年、漫画家・編集者・読者を中心に「コミック表現の自由を守る会」が結成され、抗議集会・声明発表・署名活動などを展開した。日本ペンクラブ(以下、PEN クラブ)は、漫画の表現を含めた表現の自由擁護の立場から、規制強化に対する声明を発表した。

業界対応

有害コミック論争を契機に、出版業界は自主規制の枠組みを整備した。出版倫理協議会(出倫協)を中心に、成人向け漫画への「成人向けコミック」マークの表示、シュリンク(透明フィルム)包装、コンビニエンスストア向けの陳列基準などが順次整備された。これは、行政指定による販売規制を回避しつつ、青少年への流通を制限する自主的措置として機能した。

業界自主規制は形式的には自律的なものであったが、長岡義幸は『「自主」規制の構図』(2010)において、その実態が行政指導・流通圧力・社会的批判の連動によって駆動されることを論じ、「自主」の語の二重性を批判的に検討した。

論争の帰結

有害コミック論争は、1992 年以降に概ね沈静化したが、いくつかの構造的帰結を残した。第一に、不健全図書指定制度の運用が定着し、各都道府県における青少年健全育成条例の運用が標準化された。第二に、業界自主規制(成人向けマーク、シュリンク包装)が一般化した。第三に、この論争を通じて漫画家・編集者・読者・批評家を含む「表現の自由を守る側」の人的ネットワークが形成され、後の非実在青少年論争の主体的基盤を形成した。

非実在青少年論争(2010)

「非実在青少年論争」は、2010 年(平成 22 年)の東京都青少年健全育成条例改正を巡って展開された大規模な社会論争であり、現代日本における漫画規制論争の最大の山場と評価される。

改正案の内容

2010 年 2 月、東京都は青少年健全育成条例の改正案を都議会に提出した。当初案は、不健全図書類の指定要件として「年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人物が登場する場面の状況に対する判断」によって 18 歳未満として表現されていると認識される者を「非実在青少年」と定義し、その性的描写を含む作品を指定対象に加えることを骨子としていた。

「非実在青少年」という新規概念は、実在しない架空の人物に法的属性(年齢)を付与する点で、規制対象の射程を実在児童保護から創作物それ自体の規制へ拡張する含意を持つものと受け取られた。

反対運動

改正案に対し、出版業界・漫画家・批評家・法学者から強い反対が表明された。日本漫画家協会・日本ペンクラブ・コミック市場準備会・出版倫理協議会・日本書籍出版協会などが反対声明を発表し、署名活動・記者会見・公開討論が活発に展開された。

著名な漫画家・作家として、永井豪、ちばてつや、里中満智子、竹宮惠子、さいとう・たかを、山本直樹、藤本由香里らが反対を表明した。山本直樹は、自身の作品が成人向け作品として流通しているにもかかわらず、創作物への過剰な規制が結果的に作家の自己検閲を招くことへの懸念を表明した。永井豪は、過去作『ハレンチ学園』の経験を踏まえ、漫画文化への政治介入の歴史的反復を批判した要出典

批評家側では、永山薫・山口貴士らが論陣を張り、雑誌『マンガ論争』を通じて規制論の論理的脆弱性を指摘した。法学者からは、規制範囲の不明確性・憲法 21 条との抵触・比例原則違反などの観点から批判が展開された。

都議会の審議と修正

2010 年 3 月の都議会では、民主党・共産党・生活者ネット・ワーキング社民の各会派が反対に回り、改正案は否決された。これに対し東京都は、6 月に修正案を再提出した。修正案は、(1) 「非実在青少年」の文言を削除、(2) 「刑罰法規に触れる性交又は性交類似行為」または「婚姻を禁止されている近親者間における性交又は性交類似行為」を「不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現した」図書類を指定対象とする、という形で当初案を修正したものであった。

修正案は同年 12 月の都議会で可決・成立し、2011 年 7 月から全面施行された。改正後の運用において、新基準に基づく指定がいくつかの作品に対して行われたが、運用の予測可能性・恣意性については継続的な論争の対象となっている。

論争の帰結と影響

非実在青少年論争は、漫画規制を巡る現代的論点を社会的に可視化し、その後の規制論の基層を成すものとなった。第一に、フィクション規制の論理(架空表現が現実の児童被害を誘発するか)を巡る実証的・規範的議論が深化した。第二に、出版業界・作家・批評家・読者を横断する反対運動の組織化が進み、コミックマーケット準備会・出版社・漫画家団体間の連携が強化された。第三に、論争を通じて「マンガを読む権利」を表現の自由の構成要素として位置づける議論枠組みが定着した。

児童ポルノ法改正と漫画規制論

児童買春・児童ポルノ法(1999 年制定)は、2004 年・2014 年の各改正において、漫画・アニメ・コンピュータグラフィックスを規制対象に含めるか否かが争点となった。

2014 年改正では、当初一部議員から「漫画・アニメ・CG」を規制対象とする提案がなされたが、出版業界・作家・人権団体・法学者からの強い反対を受け、最終的に創作物は規制対象に含まれず、附則において「調査研究」が規定されるにとどまった。これは、実在児童保護を主眼とする立法と、創作表現の自由との均衡を図る立法的判断として位置づけられる。

国際的には、児童の権利に関する条約(児童権利条約)選択議定書、欧州評議会のサイバー犯罪条約・ランザロッテ条約などが、創作物を含む児童ポルノ的表現の規制を求める方向性を示している。日本国内における漫画規制論は、こうした国際的規制圧力との関係においても論点化されてきた。

国際比較

漫画(コミック)規制を巡る各国の対応は、それぞれの憲法体系・社会通念・歴史的経緯を反映して大きく異なる。

米国

合衆国憲法修正第 1 条のもと、米国は表現の自由を強く保障する。コミック規制の歴史としては、1954 年に業界団体が組織したコミックス倫理規定(Comics Code Authority)が著名であるが、これは法的規制ではなく自主規制であった。連邦最高裁は Ashcroft v. Free Speech Coalition(2002)において、実在児童を用いない創作的表現の規制を表現の自由に反するものとして違憲無効と判断し、創作物への規制拡張を司法的に阻止した。

英国

英国は 2008 年の刑事司法・移民法(Criminal Justice and Immigration Act 2008)、2009 年のコロナーズ・司法法(Coroners and Justice Act 2009)により、児童を性的に描写する漫画・アニメ・CG を規制対象に含めた。これは、実在児童被害との因果関係を実証的に問わず、創作物それ自体を規制対象とする立法例として位置づけられる。

フランス

フランスは「バンド・デシネ」(BD)を文化的伝統として位置づけ、コミック表現に対しては比較的寛容な立場をとる。1949 年の青少年向け出版物に関する法律は青少年向け出版物の内容規制を定めるが、成人向け作品については原則として表現の自由を尊重する運用がとられている。

ドイツ

ドイツは刑法 184 条のもと、わいせつ表現・児童ポルノを厳格に規制する。漫画・アニメ等の創作物についても、児童を性的に描写するものは規制対象に含まれる場合がある。連邦青少年有害メディア審査会(BPjM、現 BzKJ)による青少年有害メディアの指定制度が機能している。

韓国・中国

韓国は刑法 243 条の「猥褻物頒布等罪」のもと、漫画を含む性表現を厳格に規制する。中国は包括的な表現規制体制下にあり、性的描写を含む漫画は原則として違法である。

産業側の自主規制

漫画規制論争の経緯を通じて、出版業界は重層的な自主規制の枠組みを整備してきた。

出版倫理協議会

出版倫理協議会(出倫協)は、出版業界の自主規制を統括する団体である。成人向け漫画への「成人向けコミック」マークの表示基準、シュリンク包装の運用、コンビニエンスストアにおける陳列基準などを策定・運用する。

コミック市場準備会

コミックマーケット準備会(コミケット準備会)は、同人誌即売会「コミックマーケット」の運営主体であり、参加サークルに対する内容ガイドラインを策定する。会場における年齢確認・成人向け作品の頒布制限・写真撮影制限などを通じて、即売会という流通形態における自主規制を運用する。準備会は、有害コミック論争・非実在青少年論争において、出版業界・漫画家団体と連携して反対運動の主体の一翼を担った。

コンビニエンスストア協会

コンビニエンスストア各社は、出倫協の基準に準拠しつつ、独自の陳列方針を運用してきた。2019 年、大手コンビニ各社は成人向け雑誌の販売を順次中止し、これは法的規制ではなく経営判断に基づく流通排除として、漫画規制論争の現代的な一断面を成した。

主要論者

漫画規制論争には、推進・反対双方の側から多様な論者が参画してきた。反対側の主要論者として、以下が挙げられる。

  • 永山薫(批評家): 雑誌『マンガ論争』を主宰し、エロ漫画・成人向け漫画の文化的意義と規制論の論理的問題点を体系的に論じた。著書『エロマンガ・スタディーズ』(2006)は、ジャンル批評の基本文献として参照される。
  • 山口貴士(弁護士): 表現の自由を専門とする法律実務家として、非実在青少年論争・児童ポルノ法改正論争において、法的論点の整理・反対論の論拠提供を担った。
  • 藤本由香里(批評家・明治大学教授): 少女漫画・ジェンダー研究の立場から、規制論のジェンダー的・文化論的論点を提起した。
  • 永井豪(漫画家): 『ハレンチ学園』(1968–1972)時代から PTA 等による批判の対象となってきた経験を踏まえ、漫画規制論争において一貫して反対の立場を表明した。
  • 山本直樹(漫画家): 自身の作品が指定対象となった経験を踏まえ、創作物規制の自己検閲効果を批判した。
  • 日本ペンクラブ: 文学・出版界の表現の自由を擁護する団体として、漫画規制論争においても繰り返し反対声明を発表してきた。

対抗概念

漫画規制論争において、規制論と対比される概念として、以下のものが論じられる。

表現の自由

日本国憲法 21 条 1 項は表現の自由を保障し、同条 2 項は検閲の絶対的禁止を規定する。漫画規制を巡る論争において、表現の自由は規制反対論の中核的根拠となる。

ゾーニング

ゾーニング(年齢別区分)は、表現物それ自体を禁圧するのではなく、特定の場所・対象者へのアクセスを制限する制度である。漫画規制論争においては、全面禁圧に対する穏健な代替手段として、規制反対側からも一定の合理性が認められる手法として位置づけられる。

自主規制

業界自主規制は、外部からの法的規制を回避しつつ業界の自律的統治を確保する手段として機能する。漫画規制論争においては、出倫協・コミック市場準備会等による自主規制の枠組みが、行政規制との均衡装置として論じられる。

関連項目

参考文献

  • 山口貴士・永山薫 ほか『非実在青少年論争―東京都青少年健全育成条例改正をめぐって』創出版、2010 年
  • 山口貴士『マンガと法律』創出版、2010 年
  • 永山薫『エロマンガ・スタディーズ―「快楽装置」としての漫画入門』イースト・プレス、2006 年
  • 長岡義幸『「自主」規制の構図―売れない本の作られ方』現代人文社、2010 年
  • 長岡義幸『有害コミック撲滅!?―どう考える「子どもを守る」とマンガ表現』現代人文社、2003 年
  • 山口貴士・永山薫 ほか『マンガ論争』永山薫事務所、2009 年以降継続
  • 東京都『東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例』東京都条例第 50 号、2010 年

参考文献

  1. 山口貴士、永山薫 ほか 『非実在青少年論争―東京都青少年健全育成条例改正をめぐって』 創出版 (2010)
  2. 山口貴士 『マンガと法律』 創出版 (2010)
  3. 永山薫 『エロマンガ・スタディーズ―「快楽装置」としての漫画入門』 イースト・プレス (2006)
  4. 長岡義幸 『「自主」規制の構図―売れない本の作られ方』 現代人文社 (2010)
  5. 山口貴士、永山薫 ほか 『マンガ論争』 永山薫事務所 (2009-) — 雑誌『マンガ論争』は通巻継続。マンガ表現規制論の主要文献
  6. 長岡義幸 『有害コミック撲滅!?―どう考える「子どもを守る」とマンガ表現』 現代人文社 (2003)
  7. 『東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例』 東京都条例第50号 (2010) — 2010年12月15日公布、2011年7月1日全面施行
  8. 『青少年の健全な育成に関する条例』 東京都条例 (1964) — 1964年制定、累次改正

別名

  • マンガ規制
  • 有害コミック論争
  • 不健全図書指定問題
  • manga censorship controversy
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